知っておきたい教員免許の基礎知識

教室の机

自動車を運転するのに運転免許が必要なのと同様に、教壇に立つには教員免許が必要です。これを持たずして、教師になることはできません。

教員免許の正式名称は「教育職員免許状」。「免許証」ではなく「免許状」なので、大きさは賞状くらいあります。運転免許証と違って、持ち歩いている必要はありませんが、大切に保管をしておく必要はあります。

一言に「教員免許」と言っても、種類はさまざまです。大きく「一般免許状」「特別免許状」「臨時免許状」の三つがありますが、ここでは教員採用試験に必要な「一般免許状」について、詳しく説明をしていきます。

教員免許状は、学校種(小学校、中学校、高校…)などによって、7つの区分に分かれます。そして、この7区分は、免許を取る人の卒業レベルによって「専修免許状」「一種免許状」「二種免許状」に分かれています。これをまとめたのが表1です。

表1 教員免許状の種類
区分 大学院修士課程卒業 4年制大学卒業 短期大学卒業
幼稚園 幼稚園教諭専修免許状 幼稚園教諭一種免許状 幼稚園教諭二種免許状
小学校 小学校教諭専修免許状 小学校教諭一種免許状 小学校教諭二種免許状
中学校 中学校教諭専修免許状 中学校教諭一種免許状 中学校教諭二種免許状
高等学校 高等学校教諭専修免許状 高等学校教諭一種免許状
特別支援学校 特別支援学校教諭専修免許状 特別支援学校教諭一種免許状 特別支援学校教諭二種免許状
養護教諭 養護教諭専修免許状 養護教諭一種免許状 養護教諭二種免許状
栄養教諭 栄養教諭専修免許状 栄養教諭一種免許状 栄養教諭二種免許状

 

表をよく見てください。一つ空欄がありますね。そうです。高等学校の免許状だけは、短大卒では取ることができません。要注意です。

よって、免許状の種類は計20種類!…と言いたいところですが、厳密に言うと、中学校と高等学校の免許は教科別に分かれていますので、正確な種類数はこれよりもずっと多いことになります。

さて、気になるのは、「専修」「一種」「二種」の違いです。「専修」を取ると何か有利なことがあるのでしょうか? また、「二種」だと不利なことがあるのでしょうか?

専修免許について言えば、「取った方が得!」と言い切ることはできません。ただ、「取っておいて損はない」とも言えます。

例えば、初任給は最終学歴によって変わるので、大学院を修了した専修免許取得者のほうが、大卒の一種免許取得者よりも少しだけ高くなります。ただ、専修免許の場合、大学院卒なので、教壇に立つのは最速でも24歳です。そのため、

大学卒業 → 一種免許を取得 → 正規採用教員2年 → 正規採用教員3年目
大学卒業 → 大学院進学 → 専修免許を取得 → 正規採用教員1年目

上記は同じ24歳ですが、給与の差はほとんどありません。

また、専修免許を取ると「採用されやすい」「出世しやすい」との噂がありますが、決してそうとも言えません。以前は、そうした傾向が多少あったかもしれませんが、今の教育現場は実力主義。採用も出世も、人物や実績で判断されます。

同じことは、二種免許についても言えます。二種免許で採用されている人はたくさんいますし、名教師への道を歩んでいる人もいます。

ただし、二種免許の場合は、先ほど述べたように、高校教師になることはできません。また、一種免許へ切り替える「努力規定」があって、教育委員会が行う講習などを受けるように言われる可能性があります。

教師に求められるスキルの多くは、現場で身に付きます。そう考えれば、大学院には行かずに、少しでも早く現場へ出ることのメリットは大きいかもしれません。

もちろん、「もっと学びたい」という思いを持って、大学院へ進むならそれは立派なことです。ただ、もし採用や出世に有利だから…などと考えているならば、大学院への進学はおすすめしません。